1.民泊と「マンション管理規約」
民泊について一番の問題となるのは、「旅館業法」の規制をクリアしているかという点です。しかし、旅館業法の規制をクリアしたとしても、マンションを利用している場合には「マンション管理規約」との抵触が問題となります。
ここでは、国土交通省が提示する「マンション標準管理規約(単棟型)」を例にとって考察してみます。マンションを利用した民泊との関係で問題となるのは、「専有部分の用途」についてです。
(専有部分の用途)
第12条 区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし 、他の用途に供してはならない。
また、「マンション標準管理規約コメント」によれば、以下の通りです。
≪マンション標準管理規約(単棟型)コメント 第12条関係≫
住宅としての使用は、専ら居住者の生活の本拠があるか否かによって判断する。したがって利用方法は、生活の本拠であるために必要な平穏さを有することを要する。
民泊に関する苦情で一番多いものが、マンション共用部分における「騒音」です。夜遅くにスーツケースやキャリーバッグを引いて大きな音を立てながら歩いたり、大声で騒ぐといったことに関して苦情が寄せられるケースが多いです。このような場合には、「生活の本拠であるために必要な平穏さを有する」とはいえず、「住居としての使用」ではないと判断される可能性が高くなります。
2.国土交通省がマンション管理規約について見解
2015年12月22日の定例会見におきまして、民泊許可とマンション標準管理規約について国土交通省の石井大臣は以下の見解を示しました。
国土交通省としては、マンション標準管理規約では、「専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。」とされておりますけども、こういった規約のあるマンションで、民泊を実施する場合には、管理規約の改正が必要になると考えております。
つまり、標準管理規約を採用している分譲マンションにおいて、民泊を行う場合は「管理規約の改正が必須」ということになります。管理規約の改正には「区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による総会の決議」が必要になります。(区分所有法第31条1項)
一部の区分所有者が規約を変えたいと思っても現実的には難しいでしょう。分譲マンションにおいて、民泊許可をご検討の際には必ず事前に「マンション管理規約」を確認するようにしましょう。